日本の負け!

国連安全保障理事会の北朝鮮のミサイル発射を受けた制裁決議案の7月10日採決が先送りになった。中国政府が決議案採決を数日延期するよう要請し、日米が合意したからである。麻生外務大臣は日本が決議案提出時、延期の可能性について「延期していいことは何も無い」と言い切っていたがどう釈明するつもりか。アメリカが中国の延期要請に応じるとさっさと延期を受け入れたのである。もとより今回の北朝鮮ミサイル発射について、米中は事前に熟知しており米中の国益になるよう段取りを決めていた。初めから、北朝鮮を6カ国協議に連れ出すことは決めていたし、また北朝鮮も同意していた。中国はアメリカと取引をするため、北朝鮮に行き、6カ国協議出席にわざと抵抗させようとしているのである。数日の延期の期間、てこずる北朝鮮を中国が必死で説得している様を世界に演出する。

さんざん世界の注目と心配を集中させておいて、アメリカの金融制裁緩和の裏取引をする。そこで北朝鮮が6カ国協議を受け入れ、日米とその他の国との共同提案の安保理決議を取り下げる。日本はアメリカをはじめ共同提案国を加えたために、アメリカや他の提案国が決議案取り下げ動くと無抵抗になる。ブッシュは初めから、「この問題は米朝二カ国問題ではない。6カ国会議で解決すべきである」と言ってきたので、北朝鮮が6カ国協議を受け入れれば、中国やロシアが強硬に反対する安保理決議に固執することはない。一人日本が固執すれば、日本が孤立するだけである。今になって初めて「日本が乗せられた」ことがわかったはず。韓国の大統領が「日本は大騒ぎしすぎる」と言ったが、乗せられて大騒ぎをしたため恐ろしい結果に追いやられるのである。大騒ぎの結果、国民を怒らせ、制裁を当然のものにしてしまった。日本独自の制裁決定はやがて高い対価を支払わねばならなくなる。北朝鮮は日本の制裁解除を6カ国協議受け入れの条件に出すだろう。日本を除く5カ国が北朝鮮の6カ国協議復帰を望む中で、もし日本が制裁を断行すれば日本は孤立する。まだ北朝鮮のミサイル発射が日本を陥れる関係国の共同謀議であったことが分からないのだろうか。6カ国協議は北朝鮮の核廃絶が目的であって、どこの国でもやっている軍事訓練は大した問題ではないと誘導され、結局日本の対北朝鮮制裁は問題にされなくなる。日本はバカの見本になるだろう。

日本の敗北はアメリカが安保理決議延期に応じた時、日本も同調せずあくまでも10日採決を主張すればよかった。日本提出の安保理決議は、7月4日の「日本の安全を脅かした北朝鮮のミサイル発射に対する制裁措置」であって「これから北朝鮮が6カ国協議を受け入れるかどうかの問題ではない」。既に行われたことに対する安保理決議であるはずなのに延期したのだから日本の負け!ほんの一瞬だが国連における主導権を手に入れたのにさっさと中国に渡してしまった。

(2006年07月11日)