オバマ大統領は$787 billion (約70兆円)の景気刺激策で2.2 M(220万人)の雇用を増大すると発表した。結果はどうだっただろうか。
2009年11月現在4.0 M(400万人)以上が職を失い失業率は10.2%に上昇している。オバマ大統領の話とは正に逆の結果となっている。

更に医療保険改革と地球温暖化対策予算が議会を通れば10年後には数百兆円規模の赤字が累積することになり財政破綻の懸念が議会筋で議論されている。

こうした状況下では消費者は先行きが不安でなかなか財布の紐を解かない。
アメリカ経済が不況を脱して成長軌道に乗れるかどうかはGDPの70%を占める国民消費次第。ところが市場は楽観論一色で、NYダウは2009年3月の底である6,547ドルから12月3日の10,366ドルまで上昇し、値上がり率はなんと58%である。

株価だけではなく金は史上最高値1,200ドル台にまでは値上がりし、原油も90ドルに手が届くところにきている。株式市場も商品市場も総上げである。
実体経済のファンダメンタルは一向に改善されないからFRBをはじめ主要国の中央銀行は量的金融緩和を止めることが出来ない。その行き場を失った余剰資金がさらに株式、商品市場に絶え間なく流入して株と商品価格バブルを起こしているのである。
オバマ大統領はバブル市場をそのまま実需市場に結びつけようとしている。
仮需要(バブル)はニセモノであり、実需はホンモノである。ニセモノはホンモノではないからオバマ大統領の意図は本来不可能である。しかしオバマ政権は挑戦する。
この不可能とも思える挑戦の成功の鍵は国民、特に消費者と投資家(市場)の「心理」にある。1+1=2を5だと言えば誰からも間違いと判定される。しかし人は軍艦マーチを聞くとお腹が空いて死にそうでも立ち上がるものである。
雇用が増えるどころか減っているのに、オバマ経済政策が効を奏していると思うアメリカ人は過半数を占め、批判する者は30%以下である。オバマ大統領は既に1+1=5にしたマジシャンである。舞台のマジシャン、オバマを照明と軍艦マーチで演出しているのがFRBなのである。市場はいまや1+1=8になろうとしている。
なるほど本年3月に職を失ったアメリカ人は50万人で、11月は13万人だから74%も雇用は改善されている。それなのにNYダウは「まだ58%しか上がっていないのだから安すぎる」!と言うのだろうか。こうなると一体誰が誰に騙されているのかわからなくなる。それとも誰も騙しても騙されてもいないのか。ニセモノとホンモノの区別がつかない時代になったのだろうか。いいのか悪いのかわからない。


2009年12月04日