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2007年末からの世界的不況の発端はアメリカの不動産バブル崩壊によるものであった。具体的には信用度の低い層への住宅ローン、サブプライム・ローンの破綻がことの始まりであり、この不良債権の資金源であった政府系二大住宅金融公庫と大手投資銀行が破綻状態に追い込まれることになった。
しかしToo big to fall (大き過ぎて潰せない)の理でオバマ政権はリーマン・ブラザーズなどの例外を除いて公的資金でBail out (救済)した。
オバマ政権は80兆円に及ぶ景気浮上資金を投入したが、結果は「笛吹けども踊らず」仕舞いに終わった。つまり資金は金融市場とFRBの間を空回りしたに過ぎなかった。
住宅や自動車販売数を伸ばすための税優遇時限立法も潜在需要を喚起して新たな需要を創造するには至らなかった。

そこで何時ものことであるがアメリカとヨーロッパは共同で事実上の自国通貨切り下げ戦略に打って出た。つまり内需拡大に失敗したので今度は通貨安で自国製品の国際競争力を高め外需依存度を高めようという作戦である。
日本を中心としたアジアの通貨を高騰させ輸出競争力を落とす、つまりアジアを犠牲にした欧米の利己的経済成長戦略である。

今回の不況の中で中国経済の落ち込みは短期間で、すでに成長率は2ケタに迫る勢い。中国が世界経済の不況にストップをかけた事実を否定は出来ない。
しかし中国の人民元はドルにペッグしており独立性はなくドルのように国際通貨としての影響力はない。従って世界経済を不況から好況へ誘導できるのは国際基軸通貨国のアメリカと先進国市場の4分の3をカバーする準国際通貨国群のヨーロッパなのである。
通貨安でアメリカとヨーロッパの外需が拡大されれば今度こそ、資金の空回りであった景気刺激策とは異なり、間違いなく経済成長に寄与し、欧米の景気は浮上する。
欧米の外需拡大策の効果が出始めるのは本年末あたりからだろう。
欧米の通貨安戦略で通貨高になるアジア、特に日本は円高で輸出企業の原材料、半製品の輸入コスト減で利益率が上がり、また円高による輸入商品価格の下落で消費者物価がさがるので消費が伸びることになる。
この円高効果が現れるのも本年末にかけてだろう。
ここのところ円高でニッケイ平均が急落しているが、一寸先が読めないアナリストたちの弊害によるものだ。
「市場は先を読んで動く」と言われるが日本には通用しないようだ。
たった3カ月先のファンダメンタルも読めないようでは話の他である。
来年3月の日本経済、特に大手輸出企業のファンダメンタルは気が遠くなるほど良くなる。

菅内閣は欧米の円高攻勢に無為無策だが、無為無策という策もある。
経済も政治も結果である。
結果が良ければ「ご立派」と言うことになる。
菅さんが来年3月国会を解散、総選挙に打って出れば民主党は間違いなく天下を取れるのだが。


2010年09月02日