今回は読者からの質問に答えた分をそのまま述べる。

質問は、私の「時事直言」で自民党の郵政民営化反対派と民主党は「反対のための反対」をしたと述べたのは何故か、また選挙後自民党はどうなるか、であった。

答:
小泉内閣の構造改革も今回の郵政民営化も小泉・ブッシュ間での取り決め「日米投資イニシアティブ2003」を実行に移すための政策です。同合意の中身は74の法案の実施をうたっており、目的はアメリカが日本の金融機関と対米黒字を稼いでいる優良企業、今まで聖域とされてきた稲作を中心とした農業、病院、介護、学校等を買収できるよう法整備することです。中でも郵政民営化推進がもっとも重要な事項になっています。すでに郵政民営化を除く74法案2004年中に成立しています。一言で言えば、まるで日本をアメリカに売り渡すような内容です。竹中平蔵氏はアメリカから送られた刺客のように思われてなりません。

私は、ご存知のとおり2003年に上記合意がなされた時から国会議員や皆様に同合意が日本のアメリカへの売渡しであることを説明し続けてきましたが、アメリカに小泉首相が約束したすべての74件の法案は、昨年中(2004年)に亀井、平沼、小林議員を含む全自民党議員の賛成のもとに成立しました。肝心の郵政民営化法案は小泉首相がブッシュに約束した最後の法案です。郵政民営化が国益か否かを判断するには、国益とは何かの問題を明確にしなくてはなりません。しかも日本がおかれている現実にもとずいた判断でなくては空想論になってしまいます。まず政治面では完全に日本はアメリカの支配下です。主権とは自国の安全を自国の責任と能力で守ることですが、日本の安全はアメリカに依存しています。したがって日本の政治主権はアメリカに握られています。米軍が日本に存在している限りこの事実を否定することは出来ません。経済主権も(実際は60%)アメリカに依存しています。感情的表現ですが、日本はアメリカの「属国」なのです。

さて、上記日米合意をした小泉首相は世が世なら売国奴と呼ばれるでしょう。では小泉首相はアメリカの要求を拒否できたでしょうか。戦争に敗れた属国は戦勝国の宗主には逆らえないのが現実です。こうした現実にもかかわらず、日本人に意外と惨めな感傷がないのは日本人が世界一「金持ち」だからです。ところがアメリカからして見ると「日本を金持ちにしてやっている」ことになるのです。郵政民営化はアメリカが与えた日本の金をアメリカが自由に使えるようにするためのものだという感覚です。以上の事実を私は今まで何度も述べてきました。政治家は私の述べた事実にもとずいて国民のために「出来ること」をしなくてはならなかったのです。事実を知れば国民の誰しも構造改革にも郵政民営化にも反対するはずです。日本がアメリカの属国であろうとなかろうと、嫌なものは嫌と言うのが国民です。政治家は現実と国民の希望のギャップを埋めるのが仕事です。小泉首相は歴代の首相の中で最もこのギャップ意識がなく100%アメリカに従順でした。

さて自民党の郵政民営化反対派ですが、彼らは全員構造改革関連法案74件に賛成しました。では何故同じ目的を持った郵政民営化には反対したのでしょうか。私が指摘したように「日本のアメリカへの売り渡し」が嫌だったからでしょうか。先ずアメリカに対して出来ることと出来ないことを明確にして、その上で出来る限り国民の気持ちや希望を満たすようにアメリカと交渉するのが日本の政治家の努めではないですか。上記合意書の内容をほとんどすべて立法化しておいて、いまさら郵政民営化反対と是非論をやっているほうが子供です。手遅れなのです。私は最後のチャンスとして郵政民営化後に持株会社に4社株買い取り権を持たすことで妥協するように賛成派、反対派に進言しましたが、特に反対派はこの条件を具体的に主張せず、ただ反対票を集める運動を展開するばかりでした。

いわば派閥争いを展開したのです。結果的には小泉首相も民営化法案を自民党から抵抗勢力を排除することに利用し、抵抗勢力も派閥争いに利用したことに終わりました。国民無視の郵政民営化ドタバタ劇だったわけです。

さて、ドタバタ劇を観劇しても何も得るところがないので、こうなった以上われわれ国民はどうすべきかと考えました。アメリカの要求が99%かなった今、後戻りは出来ません。今後の日本の政治のことを考えれば強い責任政党が出来なくてはならないと思いました。派閥争いで総選挙をやるような政党ではいけないと。ならば、小泉首相の自民党をぶっ壊す目的が永田町のしきたりをぶっ壊すことであるならいいのではないか。たとえ小泉好みの自民党でも小泉独裁の自民党でも政権与党が一本化することは国権が強くなることですから、いいのではないか。主権のない日本としては政権が弱ければアメリカの言いなりです。少しでも国民の気持ちを反映させるには、ここは小泉リーダーシップで行くしかないのではと思うようになりました。政治は現実です。辻論では通りません。

私が日本の理想と国民の気持ちを述べながら、最後は現実を重視して出した結論をご理解いただけたかと思います。

増田。

(2005年09月05日)