アメリカの失敗は成功

イラクはアメリカの植民地になった

米国の経済は緩やかに好況を持続する状況だが、政治のほうはいささか様相を異にしている。イラクで国政選挙を1月31日に行えるかどうかが問題になっているが、行われようがそうでなかろうがイラクの現状に変化は無い。

アメリカはイラク民主化を旗印にしているが、今まで私が何度も繰り返し述べてきたように、イラクが本当の民主国家になって最大の損失を蒙るのは、アメリカである。リンカーンではないがイラクがイラクの、イラクのための、イラクによる国家になったら、イラクの富(石油)はイラクが、イラクのために(アメリカのお為ではなく)、イラクによって使われることになる。

5千億ドル(52兆円)もの国民の血税をつぎ込み、1,000人以上の兵士を犠牲にして、アメリカが神のお告げを実行すると言うのか!アメリカの歴史にも人類の歴史上にもあり得ない事である。

イラクの泥沼は、イラク憲法や国会などの形式で解決する問題ではない。反米思想はイスラム思想が根底であるから、イスラム文化が存在する限り解消されない。また米軍がイラクに駐屯している限り、自国がアメリカ軍に占領されているというイラク国民の感覚は消えない。この二つの要因は、アラーの神の他に消すことはできない。従って、イラクを皮切りに他のアラブ諸国へ民主化を推進するアメリカの(表向きの)政策は実現不可能なのである。またアメリカ自身が、もとよりこれを承知しているのである。

イラクで選挙が行われ形式的なイラク体制が出来ると、テロはさらに激化し、イラクの秩序は15万人の米兵を必要とし、イラクの行政は、3,000名にも及ぶ世界最大の在イラク米国大使館要員を必要とする。

まるで絵に描いたようにイラクの安全と行政が、アメリカの手中に治まって行く。

アメリカはイラクの成功を失敗に見せる

こうしてイラクはまるで自然にアメリカの植民地になる。アメリカの国益にとって大成功であるが、新イラク政権ができるとさらにテロが頻発化するから、新イラク政権は機能しない。世界の目には、アメリカのイラク民主化の失敗と映る。当然アメリカの国民もブッシュはイラクでデッドロックに陥ったと考える。ブッシュは、このデッドロックから抜け出す戦略を用意していると私は考える。今後アメリカのイラク植民地政策を断行する局面で、世界とアメリカの国民の耳目がイラクに集中することは望ましくない。

パレスチナ暫定政権はアラファトの死後、アッバスを新大統領に選びイスラエルと和平の交渉が始まろうとしている。

しかし、アメリカが中東和平ロードマップを打ち出してから逆にイスラエルとパレスチナでテロの応酬が激化したように、和平の兆しが見えてきたからこそ両国を戦闘状態に陥れる何かが起きるのである。ちょうど9・11のような事件が起き、それをきっかけにイスラエルとパレスチナ、アラブ諸国との間で第5次中東戦争に発展するだろう。

米国経済はプラスとマイナス要因が均衡しているが、中東戦争はこの均衡を破り、アメリカ経済をプラスに転じさせる。

(2005年1月12日号)