第361号  (2006年06月19日 国会議員号)

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ポスト小泉の条件

後任者は国内的条件と国際的条件を満たせる人物でなくてはならない。国内的条件の第一は、小泉内閣という日本政権史上の「奇跡」が法制化した「改革」を「実行」する能力があるかどうか。次は来年の参院選で自民の勝利を約束できるかどうかである。第一の改革実行能力とは、対官僚指導能力である。小泉内閣は奇跡的に官邸指導体制を構築したが、果たして次の政権でも制度化されてない官邸指導体制を維持できるだろうか。

各省から集めた官僚は、官邸では創造的であっても帰属する省では指導力を発揮しない。小泉首相が官僚力学を一部とはいえ否定できたのは、一種のカリスマである。国民的人気という無言の力を背景に改革を果敢に押し通してきたからこそ、官僚もしばしば諦めたのであった。ポスト小泉候補に小泉的カリスマ性はない。ならば、全く別の対官僚力学が必要になる。その意味では「元官僚」もいいのかも知れない。肝心なことは、改革のための法整備の段階では「国民的人気」が必要であったが、改革実行には不要であるということ。

さて、参院選で自民党が現行より議席を伸ばすにはどうしたらいいか。2001年に、「自民党をぶっ壊す」の小泉人気に乗って当選した自民党議員は、来年の参院選では、「……をぶっ壊す」とか「改革に賛成か反対か」といった国家を二分するような激しいテーマなしには戦えないだろう。「改革実行」とか「格差是正」などは野党も唱えていることで、国論を二分しない。これからの日本を真っ二つにする問題がなければ【作るしかない】のでは。これを作れる御仁にこそポスト小泉の資格がある。

国際的条件とは、アメリカとアジアの条件である。つまり、今後のアメリカの戦略との整合性と中国を中心としたアジアとの国交である。アメリカの政治戦略は米軍再編成の名の下に展開する対中軍事包囲網であり、また対中経済戦略は2015年をめどとする、共産党一党独裁政権崩壊に伴う中国経済の「自由化」である。現行中国政権の崩壊は、上海万博をめどに起こる中国経済のバブル崩壊によって促進される。従って日米の国益上の観点からすれば、上海万博までの中国経済の成長からメリットを得ると同時に、万博後のバブル崩壊を促進するための資金投入や引きアゲ上げ等の調整が求められる。よって今後、日中は経済的により親密になる必要がある。

日米の対中軍事包囲網構築の上でも、カモフラージュと日中依存関係の深化が必要である。かつてアメリカが日本支配のために日英同盟を促進したのと同じ政治力学である。支配を目論む相手国に信頼できる同盟国を近付けるのは政治の常道と言ってもいいだろう。その意味では、一見親中派と言われる御仁のほうがいいかもしれない。さて、日本を真っ二つに割る問題を提案しておこう。その答えは「領土問題」である。来年の参院選直前までは親中派首相で、「なんでも話し合い」。領土問題で対中韓感情が悪化したところで、強硬派首相に切り替え。安倍氏が来年の選挙まで福田氏に譲ればいい。

靖国から領土問題に切り替え、対中韓強硬論で国論を二分すれば野合の衆の民主は消滅する。テポドンを打ち込まれるかも知れないのに、北朝鮮船舶を規制するなどという「だらしなさ」に国民は辟易としているのではないか。「やっちまえ!」のムードになびく。少し危険な話だが、「自民党をぶっ壊す」も「やっちまえ」も大した違いはない。どうせ(武力行使)やらないのだから。小泉さんは「自民党をぶっ壊し」ましたか? 壊れるどころか強くなったのでは? そうです、「やっちまえ」で、実際はやっちまわないで、日本が強くなればいいのです。そういう芸当ができるのは誰かな?



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)