第365号  (2006年07月05日 国会議員号)

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北朝鮮の巧みなミサイル発射

「(日本を除く)普通の国家の行為は国益を目的とする」

これは、憲法第9条で事実上国権による自主防衛が制限され、かつ核を持たぬ日本を除く主権国家の常識である。

今回、北朝鮮が数回にわたって日本(新潟と北海道)に向けて、しかもアメリカの独立記念日を選んでミサイルを発射したことの真意を分析した。

<北朝鮮の国益>

1. アメリカの北朝鮮に対する金融制裁(海外銀行口座凍結)の解除。
2. 核廃絶について(結論の出る可能性のない6カ国協議ではなく)アメリカとの二国間直接協議に持ち込む。

<上記国益を達成するため>

1. アメリカの世論にアメリカ本土を攻撃できるテポドン2号を含むミサイル発射で、北朝鮮の対米脅威の存在を見せ付ける。
2. アメリカの独立記念日とディスカバリーの発射時に合わせてミサイルを発射することで、アメリカおよび世界の世論を煽り、世界を北朝鮮に注目させる。
3. 北朝鮮は6カ国協議を拒否することで、アメリカをさらに米朝直接協議に追い込む。
4. 国連安保理での協議と制裁決議は中国、ロシアが拒否権を使う可能性があり、有効でない上時間もかかるため、アメリカと世界の世論がフラストレーションを起こし、ブッシュに対してプレッシャーがかかる。
5. 国連安保理の決定を待たず、アメリカ独自または日本等有志同盟で制裁に踏み切る強行姿勢をとることにより、低迷しているブッシュの人気が上がる。
6. 制裁が決定されると、北朝鮮は「窮鼠猫を噛む」で「制御不能状態」となり、日米にとって危機状態になるので、米朝二国協議をせざるを得なくなる。
7. 今回、日本向けにミサイルを発射したことで、日本の国民に北朝鮮のミサイル脅威を明確に確認させることになり、その結果、現在アメリカが日本に要求している米軍再編成の負担金(約3兆円)と、今後始まるTMD(戦略ミサイル防衛)の約5兆円の拠出要求を日本に受け入れさせ易くなる。
8. 既にブッシュ大統領は、北朝鮮のミサイル発射を受けて日米ミサイル防衛網の早期達成の必要性を強調している。

<結果>

無駄であるが、国際的協議(国連を含む)を継続している間、各国の中国への要望が強まり中国の存在感が強まり、日米間では懸案の日本の対米負担問題が解決。やがて米朝協議に持ち込まれ新たな米朝合意が成立し、米国の対朝金融制裁は解かれる。

今回の北朝鮮のミサイル発射はアメリカと北朝鮮だけの国益になる。


                                                         

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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)