第441  国会議員号  (2007年12月03日号)

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アメリカは強硬路線から宥和路線に変わったというが……

日本にとって、2008年の関心事は北朝鮮と中東情勢であろう。私は「2007年は変化の年」と言ってきたが、2007年は2008年に起きる変化の基盤が確立された年であり、2008年は国際大事変が起きる年であると考える。まず2007年、アメリカの政治路線が「タカ派」から「ハト派」、すなわち強硬路線から宥和路線に変わった。

それは実際に北朝鮮問題と中東問題の推移に大きな変化となって現れた。北朝鮮の核廃絶を目的とした6カ国協議は2007年2月13日合意されたが、その内容は、@北朝鮮が寧辺の核施設の機能を停止・封印する初期段階措置、A存在するすべての核施設をリストアップし、これを機能停止する次期段階措置、B北朝鮮の初期および次期段階措置の履行に対する見返り給付である。すなわち、初期段階履行で5万トン、次期段階履行で95万トン、合計100万トンの重油を北朝鮮に与えることが合意されたのである。

ただし、日本は「拉致問題の解決なくして経済援助なし」と主張し、北朝鮮を除く参加国の「理解」を得ている。2006年7月にミサイル発射、10月に核実験を行った北朝鮮に対し、タカ派が主導していたブッシュ政権と、タカ派の安倍晋三が幹事長だった小泉政権は、北朝鮮に厳しい独自の制裁を科すと同時に、国連安保理で中国とロシアまで巻き込んで輸出入物資運搬の臨検など厳しい制裁を強行した。


日本無視で対北朝鮮宥和政策を進めるアメリカ

ところが2006年11月、アメリカの中間選挙で共和党に代わって米国議会の主導権が民主党に移ると、ブッシュ政権の中枢がタカ派から国務省、CIA中心に入れ替わった。この結果はすぐさま北朝鮮と中東問題に対応するアメリカの戦略転換となって現れた。

初期段階の寧辺核施設について、IAEA(国際原子力委員会)が調査を行い5カ所の核施設の存在が確認されたが、いつの間にか調査対象の核施設の数が3カ所になったばかりか、寧辺核施設の十分な機能停止の確認なしに韓国は5万トンの原油を供給し、中国、ロシア、さらにはアメリカが経済援助を行おうとしている。次期段階措置である全核施設の申告についても、北朝鮮は2007年末までに行うとヒル国務次官補は言うが、北朝鮮の具体的履行の動きはないままである。

このような状況下にありながら、アメリカは北朝鮮をテロ支援国家指定から解除することを決めた。この指定解除は取りも直さず、世界銀行やアジア開発銀行等の国際金融機関から北朝鮮が融資資格を得ることを意味する。アメリカが宥和政策に政策転換した結果を検証すると、1)北朝鮮核廃絶が核施設の機能停止に変更されたこと。つまり北朝鮮に核施設を温存させたままで機能だけを停止させる。 2)寧辺の認定核施設数が5から3に減らされた。3)次期段階履行が曖昧な中で、テロ支援国家指定解除で国際金融機関からの融資資格を与える、等などである。このように、アメリカの北朝鮮政策の変化で北朝鮮の核廃絶は大きく後退、代わって経済援助が突出することになった。


中東に潜むアメリカの真意

一方、アメリカの中東政策も大きく変化した。イランの核施設をピンポイント攻撃する戦略があったが中止になった。ライス国務長官は8回以上も中東を歴訪し、中東和平ロードマップ再構築のために奔走している。11月27日、ブッシュ大統領は米メリーランド州のアナポリスに中東諸国と関係国40カ国あまりを集めて中東和平国際会議を開いた。2008年末までに中東和平国際合意を目指すことが決議声明された。

ところが今回の会議では、難民問題、エルサレム帰属、ヨルダン川西岸の国境線問題等の基本問題は平行線のまま。さらに、パレスチナを代表するハマス軍事勢力とイスラエル、アメリカの真の対立国イランは参加していない。こうした基本問題と対立の主体を欠いた中東和平会議を2008年末まで続けるアメリカの真の狙いは何か。

それは2008年末まで和平会議を繰り返しながら、イランとイランが支援するヒズボラを孤立させるためである。アメリカが目指すのは、和平ではなく、イスラエル対ヒズボラ(パレスチナ)、イスラエル対イランの敵対関係の強化である。その先には第五次中東戦争が見えてくる。

また北朝鮮では、「拉致問題の進展なくして経済援助なし」と主張する日本を孤立させ、日本最大の脅威である核施設は廃絶せず温存したままで対北朝鮮経済援助を拡大する。10月30日、国連総会で日本などが中心になって提案した「核廃絶決議」が賛成国165カ国で採択されたが、これに断固反対した国が3カ国あった。「アメリカ」、「北朝鮮」、インドである。日本の安全にとって最重要な北朝鮮の核廃絶にアメリカが真剣に取り組んでいるという「幻想」を捨てなくてはならない。

中東和平は第五次中東戦争、北朝鮮核施設温存は対日軍事支配のため。さらには朝鮮半島統一に要する膨大な資金援助の対日強要の地固め。これがアメリカの宥和(和平)政策の真意である。日本がこれに対抗するには、日米安保を維持しながら中国に接近するしかない。中国の軍艦の日本寄航とは「面白いこと」をするものだ。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)