第470  国会議員号  (2008年06月02日号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
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8月までは冷静に!

このところ日米の株価が上昇している。サブプライム問題が峠を越したことや、心配された米経済のリセッション入りのリスクが和らいだとの観測から、債券市場から資金が株式市場に移り始めたからだと言われる。

債券市場から株式市場に資金が流れても、金融資産全体では差し引きゼロであることを知らねばならない。つまり債券価格の下げによるマイナス資産と、株価上昇でプラスになった資産を足せばゼロだからである。したがって株価上昇が続くからといってアメリカ経済に安心感を持つのは軽率と言わざるを得ない。

アメリカの経済を判断するには消費と雇用を見極めなくてはならない。企業の業績も経済成長GDP(国内総生産)もすべて消費と雇用にかかっている。1−3月期の住宅価格指数は前年同期比14%以上下落していていまだに止まる兆しはない。前々回の本誌で指摘したように、米国モノ造り産業の代表である自動車産業ビッグスリー(フォード、クライスラー、GM)の売り上げは急速に落ち込んでいるから今後相当数のレイオフの発表が控えている。一方原油や原材料価格上昇の価格転嫁で消費者物価が上昇を続けて、長期金利の代表指数である十年物国債金利はついに4%の大台に乗せた。住宅価格下落による大幅な含み資産減と物価高、増大する失業不安で米家計は引き締めを続けるから今後消費が伸びる可能性は皆無といっていい。FRB(連邦準備委員会)は不況対策で利下げを続けてきたが、一方止まることのないインフレに局面している。FRBは今や利上げも利下げもできない、「お手上げ」状態に陥っているのである。さて、こうしたアメリカ経済の実態下での株高をどう判断したらよいのだろうか。

株高による「安心感」は投資家にとって危機であると判断せざるを得ない。

前回本誌で触れた今後延びる産業(ソーラー・エネルギー産業)のことも含め、8月までの日本とアメリカ経済の動向をわかりやすくまとめてみました。株式投資のご参考にしていただければ幸いです。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)