第473  (2008年06月23日号)国会議員号

増田俊男事務所 http://chokugen.com

アメリカ大統領選の行方

2000年11月の大統領選では民主党のアル・ゴアが支持率でブッシュを圧倒していたにもかかわらず最後の天王山フロリダ州の開票結果、塵差でブッシュの勝利となった。選挙後ゴアはフロリダ州の開票方法と開票結果に疑問があるとして裁判に持ち込んだが、ブッシュの勝利を覆すことは出来なかった。

私はある会合で、「もしブッシュが負けたら皆様の前で切腹しますよ」と言ったほど、ゴアの優勢を知りながらブッシュの勝利を確信していた。アメリカという国はアメリカの国民にとってばかりではなく、世界に対して大きな責任を持つ国であり、その最大の権限を持つ大統領が誰になるかは単にアメリカだけでなく世界の重要問題である。したがって、アメリカの大統領は世界の政治・経済にとって望ましく、かつ適切な人物でなくてはならない。単に時のアメリカの国民の支持率や人気だけで世界が大きな影響を受ける大統領が決められるなら、それはアメリカと世界にとってある種のリスクである。私は「アメリカの大統領選挙には保険がかかっている」と述べたことがある。逆に考えて、もし保険がかかっていなくて不適切な大統領が選ばれたなら、それはアメリカと世界にとって危険かつ不幸なことで許されることではない。歴代のアメリカの大統領もアメリカ議会も、「アメリカは世界に責任を持つ国である」と明言しているからには、適切な候補者が不適切な候補者に負けそうになった時アメリカは世界に責任ある行動を取らねばならない。ブッシュ・ゴア戦で、フロリダで不思議なことが起きた。たしかデントン郡だと記憶しているが、開票が終わった翌朝開票されていない2つの投票箱が発見され、その票数がブッシュを有利にした。また投票権のない重犯罪者(Felony)の調査・抽出にも疑問が残った。州から$4.Mで請け負った調査会社は民主党支持者ばかりを抽出したと非難された。さて、では2001年からのアメリカと世界の政治・経済にとってブッシュとゴアのどちらが適切な大統領だったのだろうか。2000年といえばアメリカ経済はITバブルの最盛期であり、世界中の資金がアメリカに一極集中していた。政治的にも世界は大きな混乱はなく、クリントン大統領の仲介でイスラエルとパレスチナの抗争も小康を保っていたし、サダム・フセインのイラク勢力と親米諸国との力の均衡が保たれていた。しかしながら2000年も後半にさしかかるとアメリカと世界の株価が高騰しバブル化が懸念されるようになった。一方サダム・フセインはロシア、中国、フランスに広大な油田の利権を与えたことで3国との政治・経済依存関係が強化されつつあった。経済はソフト産業バブル崩壊寸前であり、中東ではフランス、ロシア、中国のイラク接近により、それまでの政治的均衡が崩壊されようとしていた。2001年からの政治・経済は、こうしたマネー万能主義のIT中心のソフトバブル崩壊とイラクによる中東政治力均衡崩壊を目前にしていたのである。またアメリカにも国際社会にも錬金術的株成金など拝金主義に対する批判と反省が起き始め、規律を求める声が大きくなろうとしていた。経済をソフトからハードの実体経済に切り変え、サダム・フセインの突出を押さえることを瞬時に実行するには一大イベントが必要であった。この果敢な挑戦が出来るのは、腰に拳銃の共和党ブッシュかインテリ・エリートでクリントン政治を踏襲する民主党ゴアか。アル・ゴアを支持したアメリカ国民の選択は間違っていた。だからブッシュはアメリカと世界の利益を保証する保険によって決まったのであって、アメリカ国民に選ばれたのではない。アメリカのITバブル崩壊が明確に株価に現れたのは2000年11月の大統領選が終わった後の2001年4月からであった。ところがサブプライムローン問題(住宅バブル崩壊)によるアメリカの金融システム(代表的ソフト産業)崩壊危機は今回の大統領選(11月)の前に起きた。アメリカ経済はさらにハード(軍産複合体など)中心に移行しなくてはならない。中東に派兵された15万のアメリカ軍は釘付け状態で身動きが出来ないままに5年を経過し、その間にイランを中心とした中東における反米軍事力は強化され続けている。いまやイスラエルの忍耐も限界になろうとしているほどである。アメリカが次にしなくてはならないことは、経済では他産業に最も波及効果のあるハード産業の代表、1.軍産複合体を経済牽引車にすること、2.中東での積極的軍事覇権の強化である。ところで今アメリカの国民が選ぼうとしているオバマ氏は適任者だろうか。イラク撤兵を求めるような候補者には到底アメリカのManifest Destiny(宿命的義務行為)はわからないのである。後ろめたい保険をまたもや使うことのないように願いたいものだ。


ニッケイが底を打ったら8月相場に向かう

6月9日と18日の本誌で述べたことは、要するに「早く売りなさい」ということだった。

6月10日に300名以上の顧客を持つ投資顧問会社の運用アドバイザーに、「近く株価が世界的に大幅に下落する。ニッケイ225は今後700円下げる」といった私の考えを伝えた。本日(6月23日)13700円台をつければ約700円下げたことになる。もう一段下げ(13300円あたり)はあるだろうが、短期で戻ると見ているので、そろそろ8月相場に向けての上昇が始まるのではないかと考えている。今まで私は口を開けば売りを薦めてきたが、今度は口をつむることにする。売り方は買い戻し、買い方は買い始動の時が来たのか? NYが下げてもニッケイの上げが続けば、「アメリカか日本か」でマネーが動き出していることになり、8月相場へ向けてのスタートと見ていいのではないだろうか?

*親しい友人に電話でアドバイスをしていることを前々回の本誌で述べましたところ、多くの読者から自分にもアドバイスしてほしいとの要望が続いています。実は親しい友人だからお金は取れないと言ったのですが、それでは困ると強調されたので若干いただくことにしました。最近は海外出張が多いので時差には閉口していますが、それでも肝心な時は必ず連絡させていただいています。現行の「プライベート・コンサルティング」(70分間の面談)の延長として、株価動向に限らずどんなことでも電話とメールによる相談をお受けすることにしました。物理的にもお相手できる人数は限られてしまいますので、お断りする場合があるかも知れませんがご理解ください。ご連絡は下記にお願いします。

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