第499(2008年11月06日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

ホワイトハウスが白くなくなった

アメリカの顔が変わった。

アメリカのリーダーが与え続けてきたホワイトから、与えられ続けてきたブラックに交代したのである。1776年建国から今日までのアメリカは2008年11月4日をもって終焉したのである。個性無き大衆から選ばれた白紙の黒人大統領は、アメリカが今日まで経験したことの無い経済苦の中で産声をあげた。エリートから大衆へ、持てるものから持たざる者へアメリカのパワーがシフトするかに見える。過去の伝統をすてて「無」を選んだアメリカの国民は何を望み、何をしようとしているのか。”We can do it!”とオバマは叫び、大衆は“Yes, we can do it!”と答える。一夜にしてアメリカを180度変えた大衆の歓喜と沈没寸前の巨艦アメリカにいったい何が待ちうけているのだろうか。これほどのアメリカの「変化」に世界が対面したことがあっただろうか。オバマと個性無き大衆の模索が続くだろう。神よ、アメリカを守りたまえ!

上院選の民主党大勝利で挙国一致

アメリカの国益の観点からマケイン大統領を確信していた私の予想は完全に外れた。

アメリカの国益を守る保険がまったく効かなかったことにアメリカの世紀の終わりを感じざるを得ない。今回の選挙でアメリカの国益上プラスになったことは議会勢力(上院改選50議席)が民主党絶対多数になったことである。議会とExecutive(執行部)が一体となったことで今後必要な財政政策が迅速に施行されることになる。

財政政策による不況対策が待ったなしの状態にある時、挙国一致的政治体制が確立されたことはアメリカには大きなプラスである。

さて、財政政策であるが、たとえオバマ大統領といえども差し迫った経済危機から脱却するための公共投資という名の戦争を避けることは出来ない。イラク派兵早期撤退は公約の内だが、イランとの対応には積極的な発言を残している。オバマ大統領だから戦争に消極的であるという観測は間違いだろう。歴代の民主党政権は戦争にはむしろ積極的であった。

私はアメリカが来年イスラエル・イラン紛争に積極的に関わることに変わりはないと見ている。ホワイトハウスと議会の一枚岩の出現はむしろ中東戦争の準備だったのかも知れない。

不況の深刻化

高額所得者(年収25万ドル以上)に対する増税について、選挙間際になって15万ドルまで課税レベルを下げた。もし中間所得層まで増税を実行するならアメリカ経済の不況の回復はなく、落ちるところまで落ちるだろう。今後ボルカー(元財務長官)が経済政策に影響力をもつことになるなら、なおさら不況は深まることになる。ボルカーは在任中不況に手を打たず、放置して落ちるところまで落として、市場の自律調整機能を利用して景気を浮上させた実績がある。私が、「ニッケイは底を打ったが、オバマなら話は別」と述べたのはボルカーを意識していたからである。大統領選当日11月4日新政権期待で303ドル上げ、オバマ次期大統領が決まった翌日5日は486ドルの急落となった。オバマ次期大統領誕生を待ち構えていたのはブラック・ウエンズデーであった。


*増田俊男のプライベート・コンサルティング【面談・電話・FAX・e-mail】のご案内。

 お問い合わせは、増田俊男事務所 秘書 宮岡(03‐3591‐8111)まで




「時事直言」の文章および文中記事の引用ご希望の方は、事前に増田俊男事務所(TEL 03-3591-8111)までお知らせ下さい。


前へ 平成20年度 次号へ
株式会社増田俊男事務所
TEL:03-3955-2121 FAX:03-3955-2122
e-mail : info@chokugen.com