第507(2009年01月16日号)

増田俊男事務所 http://chokugen.com

Optimism(楽観主義)と Pessimism(悲観主義)

2008年は正に悲観主義が世界中を覆った時代だった。2009年を占う年初の株価は失業率(7.2%に上昇)や消費減退のニュースにも関わらず、NYでは9000ドル台をニッケイ平均も9000円を超えた。来るべきオバマ政権は、一年以上続いたリセッション(不況)から脱却するため82兆円規模の減税や大規模公共投資による雇用拡大、民需刺激策を進めようとしている。2009年に入ってからオバマ政権の経済刺激策期待で上昇した株価は、一転第二週から三週にかけて急速に下げに転じ、NYダウ9000ドル台は8000ドル割れ寸前に、またニッケイ平均9000円は、一時8000円を割るまで落ち込んだ。市場ではオバマ政権に対する期待と不安が交差しているかに見える。期待で上げが続行すると、そこへリセッション深化の経済ファンダメンタル(経済基本指標)で下げる。一、二週間にNYは1000ドル、ニッケイは1000円幅の上下を経験した。

私は「楽観主義が悲観主義を制する」と考えている。

それは経済外要因に拠る。オバマ政権の経済刺激政策は「雇用拡大」を第一目標に置き、その為に超大規模な公共投資をする。「リセッションが収束し、経済が回復に向かうまで、どこまでも刺激策を緩めることはない」と、大変な決意を表明している。しかし市場の反応は厳しくて、「言葉より現実」に引きずられている。消費者心理と市場のためには、もう一つ何かの現実が必要である。

我田引水になるが、私は「2009年、中東戦争が起きる」と言い続けてきた。

その前哨戦のごとく現在イランが支援するハマスが占領しているイスラエル、パレスチナの国境ガザ地区でイスラエルとハマス武装勢力が戦闘を繰り返している。イスラエルはハマス勢力をガザから完全撤退させるまで地上戦を拡大することを決めているから、今までの報復合戦のようにはいかないだろう。

国際世論はイスラエルに停戦を求めているし、またオバマ次期大統領も積極的にイスラエルを支援できない状態になっているが、「私の二人の娘が悪漢に襲われたら私がどうするかわかっているはず」といっている通り、娘イスラエルに、何らかの大悲劇が起きたら話は別となる。

ブッシュ政権終焉に当たって、アメリカの世界政治覇権力は戦後最低といっていいほど低下している。また対外資金依存型アメリカ経済は海外資金逃避でいまやリセッションのどん底である。利上げが出来ない環境下では為替政策で国際資金を呼び込むことはできない。また現在何一つ国際資金が集中するような(かつてのITのような) 画期的産業もない。アメリカに資金が集中してくる要因を消去法でいくと、残るのは「戦争」だけとなる。

オバマ次期大統領の「言葉と数字」に「戦争という現実」が加われば、アメリカの景気回復は、「もはや鬼に金棒」である。


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