第669号(2011年8月18日号)

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弱いアメリカ、強い日本

弱いアメリカは弱いドルに現れ、強い日本は強い円に現れている。
カネがモノを言う資本主義時代では債権者が強く債務者が弱い。
借金の大きさが弱さのバロメーターであり、債権の大きさが強さの象徴である。
日本が強くアメリカが弱い事実は日本が世界最大の債権国であり、アメリカが世界最大の債務国である事実が証明している。
アメリカの借金(国債)のGDP(国内総生産)比は101%で、日本は213%である。今問題になっているギリシャは157%,、イタリアは129%である。
日本のGDP比213%は飛びぬけて高くなっているが、日本の国債はほぼ100%(実際は95%)国内で消化されているので国際的には(国外で見れば)無いも同然で、実際はゼロに近いから飛びぬけて低くなっている。だから何時でも国際通貨不安が起きるとSafety Currency(安全通貨)として真っ先に買われるのは日本の円である。2007年末のCredit Crunch(信用収縮)が起きた時、円に買いが殺到して76円台になったのは記憶に新しい。今日もまた米国債格下げとヨーロッパの財政不安で再び76円台の円高になっていることを見ればわかる。
アメリカの三つ子の赤字体制は、子供で言えば「生まれつき」で血液型と同様変えることは出来ない。つまりアメリカの経済構造は「脱工業型」になっているから常に消費が生産を上回り国際収支は恒常的に赤字である。会社で言うと支払いが常に売り上げを上回っている状態だからアメリカは潜在的財政破綻国家なのである。アメリカの家計も国家同様債務過剰である。
今日までアメリカの財政が破綻しないでいられるのは(何度も述べた事実であるが)ドルが国際基軸通貨だからである。現在基軸通貨としてドルが貿易取引に使われている割合は約60%であるが毎月比率は下がっている。基軸通貨の特典は、アメリカ以外の第三国間の交易でドルが使われると相互取引高分のドル需要が増える点にある。中国が日本から機械を100万ドル買う場合、中国は100万ドル分のドルを買って日本に払うから100万ドル分だけドル需要が増える。
今日までアメリカのドル破綻を救ってきたのはドルが基軸通貨であったからに他ならない。
対米最大の債権者は中国で、第二は日本である。つまり中国と日本はアメリカにとって銀行の役割を果たしているのである。
その日本と中国で最近米国債の売りが加速し始めた。6月度の中国の米国債買いから売りを差し引いた純買い越し額は41億ドルで前月比で半減した。また日本は前月比73%の買い越し減で純売り越しになった。世界中で外貨準備のドル離れが加速すると同時に国際取引でもドルが敬遠され始めた。
ドル価格(価値)の低下とドル離れの悪循環が進行しているのである。


日本経済の構造はアメリカと正反対で過剰生産国、つまり常に生産が消費を上回る構造になっている。従って日本は国際収支恒常的黒字国家である。
日本の家計はアメリカと正反対の超過剰資産で国民は国家の国債発行額(約700兆円)の倍以上の1,500兆円の現金と有価証券を持っている。
アメリカでは国債発行額上限引き上げで大混乱をしたが、日本の国債の95%を保有する日本の国民はまだ800兆円(1,500‐700兆円)も国債を買う余地を残しているから日本には国債発行の上限などという言葉さえない。


本誌No.665に「8月15日の歴史」という題で、1945年8月15日は無条件降伏でGHQの支配下になり主権まで失ったが、現在日本はアメリカの債権国になり、もしアメリカが2011年8月15日に日本への利払いを怠れば日本はアメリカを差し押さえるところまで来たと述べた。


経済でアメリカを凌駕した日本が次に成し遂げなくてはならぬことは政治でアメリカに勝ることである。すでに時代から捨てられた民主左翼政権でも自民硬直保守政権でもない新しい日本のリーダーの誕生が待たれる。


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