第715号(2012年03月13日号)

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ギリシャの陰謀

私は1月30日から約3週間欧州に滞在しギリシャ国債民間保有者の中で重要な働きをしたヘッジファンド・グループの一人(友人)と行動を共にした。
友人は先ずヘッジファンドのギリシャ国債の保有率を若干上げ26% とした。
これでヘッジファンドがギリシャの債務軽減オファーに応じなければ民間債権者の合意がマジック・ナンバー75%以下になりいわゆる醜いデフォルトとなりギリシャ国債は競売に付され、欧州どころか世界がパニックになる。
つまり先ずギリシャを生かすも殺すもヘッジファンド次第にしたのである。
次に国際デリバティブ協会から、もしギリシャが新旧国債の強制交換をした場合は正式なデフォルト(Credit event)と認めるとの確答を得ることに成功。
そこで裏に当たるオフショア(ケイマン諸島など)籍のファンドと表に当たる欧米等の国籍のファンドと分けた作戦を立てた。表の約4.3%はCDS(一種のデフォルト保険)の適用を受ける為ギリシャのオファーに不同意。
約22%の裏は別の方法、つまりユーロを崩壊に追い込むと脅し保有ギリシャ債を100%米国債に超低金利でスワップすることを認めさせ、元利合計以上の米資産を確保。そこで3月9日表向き95.7%がギリシャのオファーに合意した形で収まったのである。1929年の大恐慌、1990年代の超バブルと崩壊、今回の不況とバブルも表と裏では別世界ほどの違いがある。

イタリアがうらやむギリシャ

私の滞在中イタリアの専門家は口を揃えて「ギリシャにしてやられた!」と悔しがっていた。ギリシャ支援は2010年の第一次支援と今回の第二次支援を合わすと合計約26兆である。さらに今回の民間国債保有者から約10兆円もの債務軽減に成功した。
ギリシャは民主主義発祥国。ローマはギリシャが考え出した民主主義を手段にして覇権を世界に拡大した国。今イタリア(ローマ)がギリシャ(アテネ)に悔しがるのは「民主主義の狡猾さ」を先取りされたからである。ギリシャのパパデモス首相は国債デフォルトの回避が確実になった3月9日、「歴史的な成功」と言い、「ギリシャの将来に希望の窓が開く」と言った。歴史的成功とは「狡猾な民主主義をギリシャが先行して使った」ことであり、ギリシャの将来の希望とは、4月末の民主主義選挙で「国民の希望が適う」と言うことである。
ギリシャのパパデモス首相はもとよりギリシャ国民が1,300億ユーロを手にする為に受け入れざるを得なかったEUとIMFから過酷な条件を4月末の総選挙で選ばれる新内閣が反故にすることは百も承知している。ユーロを自国ギリシャの通貨にした事が財政悪化と国債返済不能の唯一の原因であることも百も承知だから選挙後の5月になると「主権者国民の意志」を尊重してユーロを捨てて自国通貨を従来のドラクマに切り換える予定になっている。ドラクマには債務がない上ユーロに比して下がるのでギリシャの主要産業である衣料品、船舶、タンカー等の国際競争力が高まり一気に景気が向上することも決まっている。ギリシャのベニゼロス財務相が「これでギリシャは新しい出発点に立てる」言ったのは、これで「通貨ドラクマで新たなスタートが出来る」と言う意味である。同大臣は愛国的仕事を終えたことで辞意を表明したのである。
ギリシャは初めからEUとIMFの条件など無視するつもりであったのである。
イタリアがジダンダを踏むのは当然である。ESM(欧州安定メカニズム)に5,000億ユーロ(約50兆円)が集まることなどあり得ないこと。ただ欧州は欧州の責任で自助努力をしていると世界に思わせる為に過ぎない。
5月から南欧諸国にHaircut contagion(債務軽減ブーム)が起きるだろう。
ポルトガルがギリシャと同じ債務軽減オファーを出してきたら欧州首脳は一体どんな理由で拒否出来るのだろうか。第二のギリシャを出す前に欧州は経済主権否定の欧州財政統合に向かわざるを得ないのである。
欧州経済の帝国化路線が決まる6月末まで暴落した株価が上がることはない。
「略奪哲学民主主義の真実」については今回の小冊子で述べることにする。


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