第935号(2014年10月6日号)

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時代の終わりに

日本は2006年を経済成長のピークに、以後下降線をたどりながら、2008年アメリカのサブプライム・ローン焦げ付きを発端とした世界的Credit Crunch(信用喪失)による不況を経験し、デフレが深刻化していった。日本が先進国の中でデフレ突入一番乗りになったのは2007年から「よく働きよく使う団塊の世代」(ベビーブーマー)が引退し始めたからである。デフレの長期化は商品・サービスの需給が均衡又は供給過剰の状態が続くためであり、金融緩和や低金利政策等の金融政策で対応出来る問題ではない。デフレの根源は経済低成長が慢性化する経済構造にあり金融政策の仮需要(バブル)創造では解決できず、バブルは必ず崩壊する。アメリカではマネタリーベースが約$850 billionだった市場へ5年間で約$4 trillionの緩和資金を投入した結果、企業はこぞって低金利資金を借りて社債と自社株を買い戻し、さら同業他社を買収して時価総額を増やし続けた。企業は会計操作でバランス・シートを改善し続けた。CEOや役員たちは低金利資金を即効性のない研究開発や生産性向上のために使うことなく、自社の株価上昇に専念し、株価に応じて何億、何十億ドルのボーナスを懐にした。FRBは2013年5月に金融緩和の出口を模索しながら緩和縮小の方針を決めていた。緩和縮小、緩和終了、そして利上げの流れが決まれば、それまで新興国に流れていた資金がアメリカに一気に集中還流し、日本やアジア諸国に大きなインパクトを与えるので事前(4月)に日本に大型(GDP比でFRBの3倍)の緩和を要請していた。日本は政治・経済でアメリカの属国だから安倍首相は、マネタリーベース以上に緩和をする必要はないと主張し「日銀券ルール」を守っていた白川日銀総裁を世界銀行総裁でFRBの代理人のような黒田東彦氏に切り替えた。黒田日銀総裁は4月4日に「異次元金融緩」などと派手な名前の超大金融緩和(マネタリーベースの2倍)を発表、5月から日本とアジアからアメリカに流れる資金の穴埋めをしたのである。


欧州は2010年の財政、信用危機以来デフレが続き回復の見通しはない。
ECB(欧州中央銀行)は6月から政策金利を下げ続け9月にはついに0.05%に下げ、ECBの預金にマイナス金利と言う罰金を課すまでして銀行に企業融資を強制している。10月3日ドラギ欧州中央銀行総裁はユーロ加盟国の国債とABS(資産担保証券)を買い上げる時期を明示することが出来ず、欧州経済のデフレ払拭の可能性は無くなった。英国、ドイツ、フランス、イタリアや南欧諸国はそれぞれ経済成長も財務状態も全く異なるのでECBのリスク債権買入額や時期について一致しない。EU(欧州連合)は加盟国の財政は統括していないのでECBの金融政策が今日のように行き詰まると不況対策は出来なくなる。
欧州経済は絶望と見るべきだろう。


中国政府は外需依存から内需依存に経済構造を切り替える基本政策を遂行しているが、「笛吹けど踊らず」である。50%を占める国営企業はもちろんのこと、民間企業も技術開発、イノベーション、需要創造(マーケッティング)等構造改革より安易な輸出への依存を続ける。年平均15%の賃金上昇で中国の競争力は下がり続け、外資の脱中国が加速しているので総輸出額は下がり続けている。
中国の鉄鋼の生産量は半期で40%も落ちているし、住宅価格も軒並みに低下、地方によっては30%も下落している。人民銀行は再び不動産投資資金の緩和策を採り始めたが即効性はなく、中国経済の成長の鈍化は今後も続くことになる。


こうして見るとアメリカ経済だけが金融緩和なしで自律成長しているように見えるから緩和続行の日本と欧州からアメリカに資金が流れ、ドル高が続く。
しかしQE3の終了と共にバランス・シート上の企業利益と株高の好循環に終止符が打たれる。既にNY市場では高利回りのジャンク・ボンドが売られ金利上昇と株価下落の兆しが見えてきた。
世界が頼るアメリカの落日で5年間の浮かれた時代が終わろうとしている。




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