1048号(2016年2月1日号)

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マイナス金利はダブル量的緩和!

黒田日銀総裁は1月29日の日銀政策決定会合の結果報告記者会見でマイナス金利導入を決定(5対4)、今後日銀の市中銀行(銀行)の当座預金残(1月28日現在258兆円)の増加分に0.1%の金利を課すと発表した。年80兆円の国債買い取りは従来通り続ける。私は、日銀は年80兆円のダブル追加緩和(年間計160兆円)を発表すると述べてきた。ところがマイナス金利導入だけで量的緩和がなかったことから私の予想が外れたと思った読者も多いと思われるが、実は「正しかった」!これを説明するには金融緩和の構造とマイナス金利政策で変わる銀行の債券運用について述べなくてはならない。日銀の金融緩和とは銀行が保有、新発国債入札を含め市場から購入した国債を日銀が買い、購入代金を銀行が日銀に持つ当座預金に支払うことである。日銀から入金される国債代金は当然法定準備金を上回る超過準備金となるので今回のマイナス金利(課徴金)の対象となる。年80兆円、月額約7兆円の国債買いは続き国債の代金は銀行の当座預金に引き続き入金され0.1%の課徴金が課せられる。銀行が企業貸付として運用するのは信用であって現金(日銀券)ではないので銀行は日銀から入金する現金(日銀券)を当座預金口座に置いたままで、預金の増加分の信用で貸し付け等運用効果を上げている。今までは利回り0.095%の10年物国債(その他長期国債)を市場又は入札で買って日銀に売れば利ざや(0.1%‐0.095%又はこれ以上)が稼げたが今後は逆ザヤになるので今後銀行は利ざやでは債券運用が出来なくなった。今までもわずかな利ざやを大手銀行は量でこなしてきただけに(規模の小さい地銀等は悲鳴)、これ以上企業貸付けを増やすことは不可能なっている。株式等リスク市場での運用も、最近の株式市場の中暴落で多大な損を出しているだけに投資増は出来ない。従って利ざやではなく値上がり期待の債券運用しか出来なくなった。日銀は金利を下げる傾向にあり、6カ月後の参院選直前に大規模量的緩和が予定されていることから、銀行は日銀からの国債代金プラスで新たに国債を買い増し、国債価格を上げながら(利回りを下げながら)6カ月後に値上がりした価格で日銀に売却すべく備えることになる。銀行が国債を買わなければ日銀に売却した国債の利回りを失った上に今後の国債代金に対して0.1%の課徴金を払うことになりダブルパンチ。銀行が企業に貸付けるのは「信用」であって現金(日銀券)ではないから日銀の当座預金(日銀券)を企業貸付に回すことは出来ない。銀行は必要ならいくらでも信用を増幅させて企業貸付けを増やし資産(リスク債券)を増やすことが出来るが信用バブルのリスクを回避する為日銀の当座預金に法定準備金を積むことが義務付けられている。銀行が日銀に売った国債代金が当座預金口座に溜まれば溜まるほど銀行の貸付け余力が増え、貸出インセンティブになる。マイナス金利で銀行の日銀当座預金残を減らし企業貸付運用を増大させるなどと言うのは黒田流プロパガンダ。当座預金残が減れば貸付け余力が減るだけ。日銀のマイナス金利政策の真の狙いは、すでに限界に達している企業貸付けでもリスク市場投資でもなく銀行に日銀が払う国債代金7兆円分プラスの信用で銀行に日銀に代わって国債を買い続けさせることである。日銀が銀行から7兆円の国債を買い、銀行が7兆円プラスの国債を(市場から)買えば従来の80兆円の国債買いの倍の効果があるのではないのか。私が予想した通り日銀は年間80兆円の倍の追加緩和を決めたのも同然なのである。銀行に強制的に持たせておいた余剰国債を6カ月後の参院選直前、銀行の買いコストより高い価格で買い取り、「80兆円追加緩和」、「黒田ミサイル発射」などと宣言すれば、株価高騰、円安進行で参院選自民党大勝利!
こういった本誌読者を除く国民の無知が前提の「カラクリ」は「ここ一番!」の読者に何時も事前にお知らせしている。

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