第348号  (2006年03月13日 国会議員号)

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愛国心

戦後、日本はいわゆる新教育で「道徳が地に落ちた」と言われる。確かに最近の世情を見れば、頷かざるを得ない。戦前の日本では愛国心教育が盛んだった。教育勅語があったし、二宮尊徳像が小中学校の校庭にあり、毎日節約や滅私奉公が説かれた。目上の者を敬い、兄弟仲良く、他人に迷惑をかけてはいけないと教わった。こうした教えに反した者は厳しい体罰を受けた。

比較的勝手な行動が多かった私の頭には、いつでも新旧最低5つのコブがあった。誰もいない畑に真っ赤に熟れたトマトを見つけた時、私の手が自然に伸び一番美味しそうで一番大きいトマトをもぎ取ろうとした。そのとたん、一種の嫌悪感と恐ろしさが私の体中をよぎった。うちに帰り、おばあさんに本家の畑のトマトがほしくて取ろうとしたが取らずに帰ってきたと言った。すると、おばあさんは納戸から冷たく冷えた大きなトマトを持ってきて、「トシオは偉くなったね。食べたいだけお食べ」と言った。

私は未だに月夜の番にお隣からわが庭に入り込んだきれいなバラを摘むことができない。道徳とは、道徳のある学校や家庭を通して身につくものである。道徳は知識ではなく、体に染み込む感性である。盗みの誘惑に対する嫌悪感であり恐怖心である。

日本人にとって愛国心とは、「みんなで仲良くやってゆく社会を大事にすることである」。「共同体なくして個人なし」が日本で、「個人なくして共同体なし」がアメリカである。だから、日本の共同体の強さは「和の精神」の強さに比例し、アメリカの社会(国家)の強さは個人の「競争」の強さに比例する。強い社会(国家)を願い、作ることが仮に愛国心だとするなら、日本の愛国心は日本人同士の団結を強めることであり、アメリカのそれは競争相手と戦い勝つことである。だからアメリカの愛国心のためには敵国が必要で、日本の愛国心のために敵国は不要なのである。

中国や韓国にとっても、愛国心は国家の存亡に関わる最も重要な精神である。中国は異民族集団だから強力かつ分かりやすい共通精神が必要である。しかし、60を超える異なった価値観を持った13億の人民に共通する精神を創造することは不可能。一番安易で効果があるのは、強力な「敵」を作ることである。だから中国は日本を敵にするため、愛国館を全国に作り反日感情の高揚を図っているのである。

韓国の歴史は被支配の歴史だったばかりか、不幸にして民族が分断されて同じ民族が南北敵対関係にある。こうした被支配の歴史と同民族対立の中で、愛国心は国家統一に欠かせない。最も安易な道は、被支配の記憶が残っている日本を敵にすることである。だから韓国は中国に負けず反日感情を煽り続けるのである。

愛国心のために敵がいらない日本、敵が必要なアメリカ、中国、韓国。これが日本外交の基本になくてはならない。このギャップから生まれる問題解決にはどうしたらいいか。それはアメリカ、中国、韓国を「二宮尊徳像が校庭にある日本」へ入学させることであるから、日本は早く校庭に二宮尊徳の銅像を再建しなくてはならない。


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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)