第381号  (2006年10月10日 国会議員号)

増田俊男事務局 http://chokugen.com
e-mailアドレス info@chokugen.com

アジアの軍事バランスが壊れた

北朝鮮は7月5日のミサイル発射、10月3日の核実験予告に続いて、昨日10月9日に核実験を行った。ミサイル発射はアメリカの独立記念日(米時間7月4日)に合わせ、また今回の核実験予告と実行は日中・日韓首脳会談を視野に入れたものと考えられる。2005年2月、北朝鮮が核保有宣言をした直後、調査のために訪朝したアメリカのケリー特使は、北朝鮮には数発の核弾頭保有の可能性があると報告した。今回の核実験成功で、いよいよ北朝鮮は名実共に核保有国になったと認識される。

北朝鮮は7月5日にミサイル発射実験を行い、すべての着弾点を1キロ以内に集中させ、ミサイル技術の高さを世界に見せ付けた。ミサイルに核弾頭搭載が可能な段階になっているなら、最早アメリカは北朝鮮に武力行使はできない。なぜなら、アメリカが武力行使を宣言した途端に核弾頭付きミサイルが沖縄を襲うことになるからである。北朝鮮は10月8日以前の北朝鮮ではなくなったことを知らねばならない。北朝鮮が核保有国になったことでアジアの軍事バランスは完全に崩れた。核問題、拉致問題を抱えた日本の相手は核保有国となったのである。すべては「振り出しに戻る」ことになる。


ブッシュと安倍に貢献する北朝鮮

7月5日の北朝鮮ミサイル発射後、日本の政治になにが起こったか。福田康夫氏が自民党総裁選出馬を断念した。つまり北朝鮮のミサイル発射がタカ派イメージを持つ安倍晋三氏の総裁就任を決定的にしたのである。イラク情勢が混沌とする中でブッシュ人気は就任後最低を記録した。11月7日の中間選挙で共和党の敗色が濃厚である。7月17日から約1カ月間、イスラエルが民兵組織ヒズボラの根拠地であるレバノンを猛攻撃したが、現在は国連決議のもとで停戦中。イスラエルが攻撃を開始してからブッシュ人気は上昇に転じた。今回の北朝鮮核実験に対して、ブッシュは安倍首相同様強硬姿勢(制裁)を打ち出している。

今後国連での対北朝鮮制裁を巡っての議論が高まれば高まるほど、強硬派のブッシュと安倍の存在感が強まることは間違いない。中国の反対で国連安保理の制裁決議が無理となり、日米中心の有志連合で制裁を加えることになれば、ブッシュと安倍の人気は間違いなく上がる。アメリカは11月7日の中間選挙、日本は衆院補欠選挙(22日投票)を控えている。北朝鮮制裁問題に目鼻がつく頃には、またヒズボラが停戦協定を破りイスラエルのレバノン攻撃再開となるだろうから、ブッシュは中間選挙でさらに有利になる。ブッシュも安倍も「緊張の創造」が政権基盤の決め手になる。


アメリカはなぜ米朝2カ国協議に応じないのか

アメリカが北朝鮮と安全保障条約を結べば、北朝鮮はすべての核施設と核兵器を国際監視の下に廃絶する。アメリカが米朝2カ国協議に応じないのは、応じれば北朝鮮の核廃絶はアメリカの手に委ねられるからである。つまり、アメリカが北朝鮮の核廃絶を望んでいるのか、それとも北朝鮮の核脅威を利用しているのかが分かってしまう。北朝鮮に対して、それぞれ利害関係が全く異なる5カ国からなる6カ国協議で北朝鮮問題を協議しても、合意はあり得ない。北朝鮮の核廃絶は米朝2カ国協議以外に決め手はないのである。

6カ国協議とは「北朝鮮問題先送り機関」と言っていい。北朝鮮の脅威なしに日本のMD(ミサイル防衛計画)も米軍再編成協力もあり得ないことを考えれば、アメリカが北朝鮮の核廃絶を望むか望まないか、言うまでもないこと。今後、日米で対北朝鮮制裁を強めれば強めるほど北朝鮮は核実験やミサイル発射を繰り返す。そのたびにブッシュ・安倍は国際舞台で注目されて人気が上昇し、日米軍事同盟はさらに強化されることになる。北朝鮮の暴挙は、実はブッシュ・安倍にとって神風なのである。いや神風の風元は北朝鮮ではないのかもしれない。とにかく目先、北朝鮮核実験のおかげで衆院補欠選は自民の楽勝!



ご意見ご感想は:

E-mail:info@chokugen.com

発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)