第438  国会議員号  (2007年11月07日号)

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政治家、小沢一郎論

私のアメリカについての予測は、「もし私がアメリカのオーナーであったなら……」と、アメリカのオーナーになり切って予測する。それが9.11の予測を的中させたことにもつながったのである。さて今回は、「政治家、小沢一郎になり切って」みたいと思う。

私(小沢一郎)は、自分の政治使命は「政治改革」であると自認している。国を思い、国のために命を捧げたいと願う優秀な若き政治家が思う存分力を発揮することのできる、そして内外に誇れるような新しい政治体制を作ること。これが私の使命である。

私は1993年に細川連立政権を樹立して、戦後長年続いた55年体制を崩壊させることができた。政治改革はまず選挙制度改革にありと、現行の小選挙区比例代表並立制の導入に成功した。これで談合の温床になっていた中選挙区制を葬ったのだといささか誇りに思っている。

こうした選挙制度の改革は、私の理想である、いつでも政権交代が可能な二大政党制確立のためだ。そのためには、現行の選挙制度をもう一歩進めて単純小選挙区制に変える必要があると考えている。そして、政治使命としての理想の実現のためには、どうしても政権に関与しなくてはならないのだ。


すべては理想の実現のために

民主党の代表として、私が政権獲得を目指すのは、二大政党制の実現のためであって、単に自民党に勝つことでも政権欲でもない。党利を離れた理想の国政の追求である。私は先般、福田総理と「腹を割って」話した。福田総理も私も「思いは一つ」であった。自民党でも民主党でもない、「国政」のあり様だった。 

国民の政治不信、国際対日不信、大変動する国際政治、経済、抜き差しならぬ北朝鮮問題や中東情勢等々が渦巻く中で、果たして日本は今日の政治体制でやっていけるのか、という思いは同じであった。まずは国会が機能しなくてはならないのだ。福田総理は、「大連立案はどちらから出た話か」と聞かれて、「阿吽の呼吸だ」と言われた。涙が出るほどの名言だ。民主党は実際は野合であり、自民党の不祥事や失策なくして選挙で勝つことはできない。そんな民主党にはまだ政権獲得の資格も能力もないのは事実だ。

私の理想へ向けて一歩前進し、かつ清潔で、優秀で、責任感が強く、やる気満々の民主党の若き力のためにも、現実的な政治構想を検討する必要があると思った。党に帰って役員会に諮ったら、大連立も与党・民主の政策協議も検討の余地なしとなった。今日の民主党は、まだ民主党のための民主党でしかないのだ。恥ずかしい話だ。


辞意、翻意を経た私の立場

辞めると言ったら辞めるのが今までの私、小沢一郎だ。「民主党には政権獲得能力なし」と本当のことを言った以上、そんな民主党の党首になるのも、またなれと言うほうもおかしな話だ。本当のことを言い、いま日本にとってすべきことを言ったのに「聞く耳をもたぬ民主党なんか死んでしまえ」と言いたいのが本当の気持ちだ。しかし、自分が辞めて次に誰が代表になっても、参議院与党の権利は与党攻撃に使うだろうし、参院与党の責任の何たるかもわきまえず、かつての社会党のように「反対のための反対」を続けるだろう。

そうなれば、日本の政治はさらに悪化するだけだ。民主党の政権担当能力を否定した私に、辞意を翻意するよう党員全員が懇願しているのだから、今後代表としての私の求心力は増すはずだ。さらに党員にこれから大連立という踏み絵をじっくり踏ますことで、党員を権力にしがみつく旧態然の老骨と日本の政治に必要な者とに区分することができる。

「条件付で」などと生意気なことを言っていた連中も、大連立風で民主党解体恐怖症に陥っているから、私が今後進める事実上の国会の政策決定会合、「与野党政策審議機関」に反対はできないだろう。この機関を発展させ、中連立に向かい、さらに大連立に向かうのも悪くないのではないか。今は政局を大混乱に陥れることなく、従前より有利な立場に立って理想に向かうとしよう。

ところで、「恥を忍んで」の恥とは、「国政より党利を優先する民主党の恥」という意味で使ったのだが、分かってもらえたかな。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)