第461  国会議員号  (2008年04月02日号)

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基本論から見たアメリカ経済

今日の世界的株価下落はアメリカ発のサブプライムローン問題を象徴とする信用バブルの崩壊による。「信用」には二通りあって、在るものを信じる信用と、無いものを在ると信じる信用がある。実際に在るものを信じる信用は、在るものが存在する限り変わらないが、実際には無いものを信じる場合二通りの結果になる。無いものを信じた結果無から有が生まれる場合がある。デカルトの「われ思うゆえにわれ在り」ではないが、「誰もがあるといっているのだからあるのだ」といって、みんなが「在ると思われるもの」を評価して「現金」を払うと無かったものが形になって現れる。この新たな富こそがモノ作りが創造する富(価値)と共に資本主義を支える「成長」の基盤となる。さてもう一つの信用とは、在ると信じたものやがて無いとわかってしまう信用である。これが信用バブル崩壊を起こす信用である。さて次に経済の基本について知っておこう。経済は主体産業と派生産業から成り立っている。主体産業とは「モノ作り」であり、派生産業とは(広い意味で)サービス業である。経済の基本を経済規模で決めてはならない。いくら情報ソフト産業の規模(取引金額)が鉄鋼業より多くても、鉄を作るための金融業であり、鉄を運搬するための流通であり配給である。モノがあるから、またモノのためにサービス産業が存在できるのである。

私は本誌で何度もアメリカは2002年以来不況だったと述べてきた。ところが今世界中がアメリカは不況に陥るかどうかを心配している。この判断の差は何から生まれるかというと、私は常にアメリカの主体産業を見てきたからである。2002年からはドル高で輸入物資が安くなり製造業は国内と国際市場で競争力を失った。2002年から2005年までアメリカのGDP(国内総生産)は平均で3%以上の成長を遂げたが、不動産バブルと過剰信用供与による部分を差し引いた真水の部分、すなわちモノ作り(主体産業)の成長は5年間も年平均1%以下が続いたのだから不況だったのである。

私は拙著「またもや ジャパン・アズ・No1の時代がやってくる」(徳間書店)でも、また本誌、勉強会などで、「サブプライム・ローン問題は3月で終わる」。そして4月から「市場に日米経済の方向が明確になる」と述べてきた。つまり日米経済は、アメリカは外需、日本は内需依存型に向かうと述べてきた。事実今日の円高、ドル安がこの両国経済の方向を支えはじめている。たとえ金融・システムが投資銀行が起こした信用バブルとその崩壊で危機状態になっているとしても所詮は派生産業。FRBが供給する資金は商業銀行を通して主体産業に潤沢に流れている。製造業は2002年以来の不況下で供給を押さえてきたため現在在庫は極端に低く、またドル安による輸入物価の高騰で国内需要が急増している。当然国際収支も昨年から改善を続けている。いまやアメリカの主体産業は内需、外需増大を柱として不況からの脱出が確実になり、やがてアメリカ経済の牽引車となるのは確実である。今後マーケットの話題が派生産業の金融システムから主体産業のモノ作りの実態に移ってくれば、市場は健全化する。まだ金融システム危機の犠牲が明るみになりパニックが起きないとは限らないが、一応3月をもって金融産業を襲った信用収縮の嵐は去ったと見ていい。派生のバブルは直ぐに消えるが、本物の息は長い。これからは主体産業の時代、本物の時代である。本物経済、偽ものに振り回されない本物の市場が蘇るのである。



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発信者 : 増田俊男
(時事評論家、国際金融スペシャリスト)