第475 (2008年07月02日号)国会議員号

増田俊男事務所 http://chokugen.com

果たして底をうったか?!

過去、本誌において、ニッケイの13000円台への下落について幾度か話をさせていただきました。そのなかでいったん戻した後に「もう一段の下げがある(13300円台)だろう。しかしその後の戻りは早い。」と云うことをお伝えました。本日13300円台からさらに13200円台にまで下がったことにより、これで底をついたと考えます。そしてこの下げの回復は意外と早いとも考えています。今後余程のことがアメリカで起きない限り上がるしかないのではないでしょうか?

株式投資でもっとも大事なことはタイミングです。売り買いのタイミングに限らず、一切取引をしない投資方法もあることを忘れてはなりません。

私は「8月相場説」を述べ、それまでは株から遠ざかるようにと言ってきましたが、そうは言っても現実に株を持っている方々には、「上げたら売って、買いは慎重に」と言ってきました。ところが先週の終わりからは、「下がったら買って、上がっても売らないように」と言い始めました。実際には今年の4月から、日本の株式市場のパーフォーマンスがNYよりきわめてよくなっています。相場の流れが変わってきた証拠です。つまり絶好の買いのタイミングが近いということだと思います。

アメリカ経済の推移を辿って見ましょう。ブッシュ政権は2001年から始まりましたが、この年はクリントン政権のITバブルが崩壊した年に当たります。2001年6月からNYダウもナスダックも急落したため、リセッション(不況)に陥ると考えられましたが、2001年9月11日の同時多発テロをきっかけにアメリカはテロとの戦争に走り、「戦争時のアメリカ買い」の原則で、世界資金がアメリカに向かいはじめたため、2002年から2006年にかけて急速に地価と株価が上昇しました。グリーン・スパンは戦争時のドル高を利用しながら、0.25%という微小な利上げ(2004年の6月から2006年の6月)をしたのでさらに世界資金がアメリカに向かい、その余剰資金がサブプライムローン現象を起こしたのです。世界から集まってきた資金は、低成長であまり資金需要のない実体経済には向かわず、金融資産と不動産に向ったのです。不動産も株式も、それ自体価値を創造するものではありません。価値創造の裏付けがなく価格が上昇すれば必ず価格バブルは崩壊し、やがて急速に上昇する前の水準(2006年11000ドル前後の水準)に戻ります。

2003年から株価、住宅価格が上昇に転じアメリカ経済は急成長を遂げ、NYダウはスタートの7800ドル(2003年3月)からその後14198ドル(2007年10月)まで上昇しました。株価の上昇幅は6308ドルもありました。したがって、今回の住宅バブル崩壊と株価下落が向かう水準(株価水準、住宅価格)は急速に上昇し始めた時の水準つまり2006年のスタート時点ということになります。7月1日にNYダウは一時$11,183をつけ、$11,382で終わっていますので、ほぼ2006年のスタートまで戻ったことになります。NYも底をつき、ニッケイも本日底に達したといえるのではないでしょうか。NYはまだ下げるかも知れませんが、ニッケイの場合は底に来たと考えています。

日本株は、本年3月まではNYに連動して下げてきましたが、4月からはニッケイ平均のパーフォーマンスがNYよりよくなってきましたので、必ずしもニッケイはNYに連動しなくなってきています。日本はインフレ率が低く、エネルギー効率が世界一高く、大手企業の4割が無借金、サブプライム問題で最も被害が少なく、金融機関は軽症でした。アメリカの地価が2005年まで上昇を続けたのに、日本では2005年まで地価が下がり続けました。当然日本では住宅バブルが起こっていませんし、地価も株価も先進国でもっとも低迷してきました。このようにアメリカ経済と日本経済を比較すると、圧倒的に日本経済が比較有利であり、今後地価も株価も上昇の可能性が高いのです。

アメリカ経済が不安定なため資金は商品市場に流れ原油高になっていますが、何時までも上げ続けるものではありません。

原材料や農産物が高騰すると当然生産者は生産を増やします。一方消費者は買い控えをしますから、消費は落ち、原油や原材料の需要は落ち込みます。したがって、近い将来原油や農産物が生産過剰となることは確実で、価格は下がり、価格が下がれば消費者物価もさがり、今度は消費が回復して、再び経済は成長に転じます。今はちょうど、悪材料ばかりが目立ち、経済の方向が見えず、投資家心理(センチメント)が不安定になっているときなのです。2001年にITバブル崩壊、そして今住宅バブル崩壊と続きました。ITも住宅もサービス産業で価値を生む産業ではありません。アメリカがサービス産業のバブル崩壊で失った損失を埋めるには、他国からの資金で埋め合わせるか、自ら価値(富)を創造するしかありません。もはやアメリカには他国から資金を導入するほどの魅力的産業は見当たらないので、こんどは自ら価値を創造する、すなわちモノ造り重点の経済政策に切り替えなくてはならないのです。ドル安政策はそのためなのです。アメリカ経済は、今ちょうど切り替えの調整期、または混乱期といえます。

さてこうした時の株式投資はどうあるべきでしょうか。国際比較で圧倒的優位にある日本株しかないのではないでしょうか?

現在のアメリカの株価は原油と金(ゴールド)に逆連動しています。つまり、原油とゴールドが上がればNYが下がるというパターンです。

ゴールドは完全にインフレヘッジとなっています。原油が上がるからアメリカがインフレになるのか、インフレだから原油が上がるのか。

まるで鶏と卵の関係になっています。日本株については、何時原油とゴールドの価格が限界に達するかどうかにかっています。私は、原油は150ドルが限界であるという考えで、昨年から、「原油は150ドルになる」といってきました。そろそろ限界と言うことです。では限界に達するとどうなるかといいますと、商品市場に入っていた投機資金は行き場を失い、国際比較優位な市場である日本に向かわざるを得なくなります。どう考えても、アメリカ、ヨーロッパ、日本経済を比較したとき、市場は日本が突出していること認識します。昨年からの私の「8月相場説」はここからきています。最近の日本の株価を見ていると、NYが下がってもニッケイは上げますが、引け間際には若干下げるようになっています。

「生みの苦しみ」と私が言ったことが現実になっています。前場のように後場も上げきって終わるところまであと一歩というところまできています。13300円台に落ち込んだ今、これが最後の底なら、絶好の買い場ではないでしょうか?




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