第615号(2010年11月15日号)

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G20とAPECを終えて

10月28日の「時事直言」で述べたように、GDP(国内総生産)に対する貿易黒字枠と外貨準備高の比率を設定してIMF(国際通貨基金)に監視させるなどとするアメリカの国際不均衡是正案は合意を見なかった。
国際経済上の不均衡は過去にも問題となり国際会議で何度も検討されたが強制力を持った合意はなされなかった。自由が建て前の国際経済で市場を規制する合意は基本的に不可能なのである。
だから今日まで「やった者勝ち」がまかり通ってきたのである。
今の中国のように日本もかつての右上がり成長時代は「やり玉」に挙げられたものであった。中国も為替操作、ダンピングなどと言われながら時を稼ぎ、やがては日米のような先進国になって行くのが正に経済史が証明するところである。生活水準と一人当たりのGDPが日本やアメリカと比べて10分の1の国の通貨を市場で先進国通貨と同様に取引すること自体不平等であり、不平等を強制するのは市場の自由に反する。新興国の経済は先進国に比べて有利であり、またそれだけ先進国が不利なのは当然なのである。
ゴルフでもビギナーにハンデを与えるのは当然のことである。こうした「常識」をわきまえた先進国が何時ものようにG7やG20などの国際会議で「国際不均衡」について(飽きもせず)議論することはおかしなことであるが、その「裏」を読めばこれまた納得できるのである。

国際会議の出席者は誰か?

それは一国の大統領であり、蔵相や中央銀行の総裁である。
彼等は自国の産業界や国民の利益代表である。
だからアメリカの大統領はアメリカの国民に選ばれたのだから(日本人に選ばれたのではないから)、日本の産業界や国民の利益など気にしない。
国際会議でいかに自分は自国の国民に尽くしているか、いかに自国に不利になる他国の主張を押さえているかを見せつけようとするのは当然である。
アメリカ議会が中間選挙前に、実際には何の効果もない中国の輸入品に対する制裁法案を通したように、国際会議でも意味のないこと(国際不均衡)を意味のあるようにマスコミに騒いでもらい中国に圧力を掛けて見せるのである。
中国も自分はハンデをもらうのは当然だという正論で議論せず、プロ級のゴルファーであるアメリカの着ているシャツが派手過ぎるなどと話題を反らすのである。つまり通貨の話をそらしてアメリカの量的金融緩和を非難し、いかにも自国のインフレの原因を作ったのはアメリカであるかのように演出するのである。アメリカは中国にインフレを輸出し、中国はアメリカにデフレを輸出してお互いの利益にしているのが現実である。中国は2年半ぶりに利上げをしたため産業界から非難されたが責任はアメリカにありと言うわけである。またアメリカは10%になんなんとする失業率に苦しんでいるが、中国はアメリカに失業を輸出しているなどと責任を中国になすりつける。国際舞台とはこんな程度の猿芝居の場でしかない。大事なことは国際政治はショーであっておよそマーケット(市場)には関わりのないということである。
資本主義社会においては経済成長がすべてであり、成長が止まったなら資本主義は崩壊する。
新興国(中国など)の実需は今後20年間は拡大し続けるが、先進国の内需はよほどの発明、発見がない限り期待できない。唯一期待できるのは「贅沢」という名の「無駄」である。無駄な生活、無駄な消費以外に先進国の経済を成長させるものはないのである。そして必ず無駄は行き過ぎて、我に返る。その時バブルが崩壊して不況に陥る。先進国はバブル政策(インフレ政策)無しに成長なしだからバブルとバブル崩壊、好況と不況を繰り返す。しかし新興国は国民の生活水準が先進国並みになるまでバブルが続き崩壊しない。
ハンデゼロのゴルファーはより上達することなくゼロを守るのが精いっぱいだがハンデ36のビギナーはハンデゼロになるまで何年間も上達し続ける。
経済を一枚岩で見てはならない。




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