第700号(2012年01月17日号)

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五月雨をあつめて早し最上川

今後の世界経済について世界のアナリストの見方はほぼ一致している。
「欧州経済は低迷するがアメリカ経済は比較的しっかり、中国も引締め政策解除で成長を取り戻すので大暴落(Messy Crash)は避けられるだろう」。
これがおおよその見方である。私は市場構造論と目先の現実論から超悲観的(Pessimistic)である。
非成長時代には仮需要をベースにした金融市場が衰退に向かうのは当然である。にもかかわらず、NYもニッケイも出来高の減少は続いているが市場崩壊の兆しは見えない。その理由は今回の「小冊子」(Vol.32)で詳しく説明している。
ここ三週間の世界の株価を見ると欧州債務問題で下げ、アメリカの経済ファンダメンタルズで上げている。正に一勝一敗だが私は次の勝負を決めるのは中国経済であると見ている。アメリカの雇用と消費が連続的に伸びたことからアメリカ経済が「自律回復」したという市場の判断に私は懐疑的だったが、思った通り「三日坊主」で新年早々消費も雇用も予想に反して落ちてきた。
現在のアメリカの内需は弱く、今後の緊縮財政でさらに悪化することは確実。従ってアメリカ経済はオバマ大統領の看板である「輸出倍増」(10年間)による外需にかかっている。日本同様アメリカの輸出先は中国、欧州、日本を含むアジアとその他の新興国である。「アメリカ経済はしっかりしている」というが、今後とも「しっかり」するかどうかはアメリカの輸出にかかっている。
欧州は今後Recession(不況)に陥るのは確実だからアメリカの欧州向け輸出は2桁減。肝心の中国では2011年12月のアメリカからの輸入は2.7%、ドイツからは4.2%減少で、中国の輸入の伸び率は2009年10月以来最悪となっている。
オーストラリア、ブラジル、アジア諸国の経済成長を支えてきた中国からの原材料の輸入は急激に落ち込みブラジル中央銀行は消費減退に直面し利下げを強制されているほど。中国は急激な景気回復政策は取らず(利下げはせず)銀行の預金保有率を下げることによる対インフレ・ソフトランディング政策だから内需拡大効果は期待できず海外からの輸入の伸びは落ち続ける。かつて中国、インド、ブラジル等振興国とアジアの後進国に過剰国際資金が流入しインフレを起こし不動産バブルが起きたので各国中央銀行は利上げを続けて対応したが、今や国際資金は急速に引き揚げているからインフレは収まってきたものの、不動産バブル崩壊と輸出激減で成長にブレーキがかかる。やがて欧州に続いて中国を除く振興国に債務問題と銀行破綻問題が続発するだろう。アメリカ、欧州、新興国、途上国、アジア諸国にまだ致命的ではないが、やがて大問題化する要因が存在する。先進国、新興国、途上国で広がりつつある小さな問題がやがてグローバルの波に乗って世界を揺るがす大波乱となるだろう。
円独歩高の日本は東日本大震災復興のインフラ需要で内需拡大が進行、円高メリットで輸入消費物価が下がり国民の生活の豊かさに寄与。高い円はやがて資金枯渇が始まるアジア市場の成長センターへ直接投資の形で流入、西欧の競争力のある企業を円高メリットで安く買収し急増中の海外からの利子、配当所得の倍増化につなげようとしている。世界中の人々が将来の不安を抱える中で日本人は輸入高級ワインを安く味わい、高級輸入家具で生活の質を向上し、パリでブランド品を超安で買うなど豊かな生活をエンジョイしている。一方企業はサプライ・チェーン問題等での在庫が少ないところへ円高メリットによる輸入原材料のコスト・ダウンで経常利益は上昇。円高のおかげで世界中で日本だけが喜んでいる。日本は中国と共に破産寸前のアメリカと欧州を救済するため彼らの借金(Debts=債券)を買い占めてやがて「東が西を支配する」時の力を蓄えている。日本の投資家は、五月雨を集めて起きる「大暴落」を巧みに利用する必要がある。
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